大腸がん検診で陽性となった場合や、便秘や腹痛で自分が大腸がんではないかと思って病院に受診した場合、どんな検査をどのような流れで行うのか不安に思う方はいませんか。病院に行くとたくさんの検査室、検査機械があって自分にはどれが必要なのかはわかりませんよね。ここでは大腸がんに関係する主な検査の内容や行うタイミング、検査の目的について解説します。
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診察の基本、問診・腹部診察
病院に行くと、まず、問診といって受診するきっかけとなった症状(便秘、腹痛など)やその経過について詳しくお聞きすることから始まります。引き続いて診察となります。お腹だけではなく頭から足先までの全身を診察します。
診察には視診(みる)、聴診(聴診器で聴く)、触診(手で触れる)があり、大腸がんが疑われる場合には、当然、お腹の診察は重要です。この時点でしこりを触れたり、腸が張って腸閉塞が疑われたりする場合には進行した大腸がんの可能性があります。早急に検査を行い、診断をつけることが必要と判断します。
欠かすことができない直腸診
診察の最後に直腸診を行います。あまり経験されたことなない診察で、抵抗感があるかもしれませんが、大腸疾患の診察では場合には欠かすことができません。左を下にして横になり、お尻を医師に向ける姿勢で行います。肛門を視診した後に、示指を肛門から入れてゆっくりと直腸の中を触診します。
直腸がんがある場合には直接、指で触れるので、その場で診断がつくこともあります。また、指の届くところにがんがなくても便に付着する血液の色からがんの存在が分かることもあります。
大腸がんの確認は大腸内視鏡検査
これらの診察で大腸がんの疑いがある場合には大腸内視鏡検査を行います。大腸内視鏡検査とは、肛門から内視鏡(先端に高性能カメラがついた柔らかいチューブ)を挿入して、大腸の中を直接観察する検査です。
まず、肛門から盲腸(大腸の一番口側の部分)まで内視鏡の先端を進めてから、空気で腸を膨らませて、内視鏡を抜きつつ腸の中を観察します。
内視鏡でがんを疑う病変を認めた場合には、生検といって、病変のごく一部の組織を内視鏡の先端から採取して、病理検査(顕微鏡で採取した組織を検査する)に提出します。病理検査でがん細胞が確認されると、最終的に大腸がんの診断(確定診断といいます)になります。
内視鏡検査はがんがあるかどうかだけでなく、がんがあった場合にそれが内視鏡で取れるか手術が必要かどうかも評価します。早期のがんで腸の表面のみにある場合には、内視鏡で削り取るだけで治療が終わります。手術でお腹を開けたり、腸を切ったりする必要がありません。
かつてはバリウムを使った注腸造影検査がよく行われていましたが、内視鏡検査の普及によって、検査の件数は減っています。手術の前にがんの位置や大きさを評価するために行われることがあります。
がんの進行度を調べるCT検査
がんの『ステージ』とう言葉を聴いたことがありますか?がんの病気の程度、進行度のことをステージといいます。がんの治療はこのステージに応じて効果の高い治療が用意されています。内視鏡検査で手術が必要な大腸がんと診断されるとステージを判定するためにCT検査を行います。CTは放射線を使って体の輪切り画像を撮る検査です。造影剤と言って血管注射をしながら検査すると、より精密な診断ができるので、大腸がんのステージ診断のためにしばしが利用されます。
ステージを決定する要素には以下のようなものがあります。
・がんの深さ(≒大きさ)、がんが周りの臓器に食い込んでいないか(浸潤)
・がん周囲のリンパ節転移の有無
・肝臓、肺など他の臓器に広がっていないか(転移)
がんが他の臓器に浸潤している場合にはその臓器も切除する必要があります。取り残しがあるとそこからがんが再発してしまうからです。リンパ節に転移がある場合には広い範囲のリンパ節の切除が必要となります。肝臓や肺などへの転移がある場合、転移の個数が1,2個など少数であれば手術が可能ですが、数が多いと手術ですべてを摘出することができません。化学療法(抗がん剤)が治療の主体となります。
肝転移の診断には超音波検査も有効
プローブという器具をお腹に当て、そこから出る超音波という人間には聞こえない音を使った検査です。痛みは全くありません。機械が比較的小型なため、診察室でお腹の診察と同時に行える点が便利です。肝転移の発見に威力を発揮し、CTよりも小さな肝転移を見つけることもできます。一方で、肝臓との間に空気があると超音波が届かないので見えにくい部分(死角)ができてしまうのが欠点です。CTや下記のMRIなどの検査と総合して評価します。
MRIは直腸がんと肝転移の診断に有用
CT同様に体の輪切りにする画像検査にMRIがあります。CTが放射線を使う検査であるのに対し、MRIは磁気を使った検査です。骨に囲まれた部分はCTよりも鮮明な画像が撮影できるので、骨盤に囲まれた直腸がんの診断に利用されます。また、ごく小さな肝転移を見つけることもできるため、CTで肝転移がはっきりしない(疑わしい場合)にMRIを利用します。この際、MRI専用の造影剤を注射して検査を行います。
まとめ
大腸がんに係る検査を大きく2つに分けると
①大腸がんの有無を調べる「大腸内視鏡検査」と②大腸がんがあった場合に、そのステージを調べるための「CT」「超音波検査」「MRI」に分けられます。便潜血が陽性の場合や下血や腹痛などの症状があり、大腸がんが疑われる場合にはまず大腸内視鏡検査から始まるのはそのためです。